2012年4月7日土曜日

メモ帳 : ローンパーティシペーション(リスク経済価値アプローチによる金融資産の消滅)


まずはローンパーティシペーションの意味から説明。

ローンパーティシペーション(またはサブパーティシペーションとも)とは日本語で「参加契約」とも訳される。これを行う主体は金融機関、ここでは主に銀行と仮定して話を進める。
(ローンパーティシペーションにおいて、銀行を原債権者、銀行から金銭を借用している者を原債務者と呼ぶ場合もある)

銀行と原債務者の間には金銭の貸し借りの関係がある。銀行は金銭を貸し出し、この利息を回収し、期日には元本を回収する(利息と元金を合わせて元利金と呼ぶ)。ここまでは通常の貸付金。

一般に銀行はBSが重くなることを嫌う(この部分が動機で、最終的には貸付金はBSに計上されなくなる)。ここで銀行は貸付金の債券を流動化する。つまりローンパーティシペーションとは、貸付債券を流動化する手法である。

銀行は貸し付け債券を細分化して流通させる(=証券化)。ここで債券を購入する第三者を「参加者」と呼ぶ。
銀行が(法的にも経済実態的にも)所有していた債権は、あたかも参加者に売却されたかのような形をとる。


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例を挙げて説明する。銀行は1000の貸付金を有する(しかしオフバランスしたい)。この貸付金から生じる利息は年100だとしよう。これを10個に分割して10人に売却する。細分化されて売却された債券は1個につき、年10の利息が生じ、満期日には100の元金となって参加者に返済される。もちろん原債務者が倒産した場合、損失は参加者に帰属する(銀行は参加者に債券を分割して売却したため、すでに貸付金は回収しているような状態)

これはつまり貸付金から生じるCFとリスクを参加者に移転させたことを意味する。ただし、このとき原債務者と参加者の間には何らの契約関係もないということ は注意。

さて、いま学習しているのは「金融資産の消滅の認識」である。この場合、銀行の金融資産である貸付金の消滅を認識できるのかどうかという話。これを判断するために二通りのアプローチがあった。すなわち財務構成要素アプローチとリスク経済価値アプローチである。そして日本の現行では財務構成要素アプローチが基準となっている。


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結論から言って、これは例外的にリスク経済価値アプローチを適用し、資産の消滅を認識するケースである。逆に言えばこの場合、財務構成要素アプローチでは資産の消滅は認識できないからということになる。

資産の消滅は、権利行使(貸付金を回収したとき)、権利喪失(オプション権を行使せず満了したとき)、支配の移転(譲渡したとき)のいずれかで認識される。もちろん今回のケースは支配の移転があるかどうか(貸付金は回収していないし、その権利を失ってもいない)。

支配の移転は次の3要件を満たしている必要がある。銀行が分割して参加者に売却した債権について、契約上「買戻特約が付されておらず」、「そこから生� ��る将来CFが参加者に帰属し(利益享受)」、「法的に保全され倒産リスクから隔離されている」ものでなければならない。

リスク経済価値アプローチは大筋として経済的実態が(リスクと経済価値が)移転されているかどうかで金融資産の消滅を判断する。

財務構成要素アプローチは法的実態に細かく着目して金融資産の消滅を判断する。


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前者の方法によれば、貸付金の持つリスクや将来CFは参加者に移転されたため、(契約上の債権者は相変わらず銀行であるものの)貸付金はBSから姿を消す。

しかし後者の方法によった場合、参加者の法的保全の要件を満たしていない。つまり銀行側で貸付金をBSから控除できない状態である。ローンパーティシペーションの契約中に、その発行主体である銀行が倒産した場合、参加者が購入した債券は価値のないものとなってしまう。あくまで法的には銀行(原債権者)が貸付金の保有者であり、銀行が倒産した場合、さらにその債権者である例えば別の金融機関などが貸付金の権利を差し押さえることはあっても、ここから参加者に配� �されることはない。つまり参加者の取得した有価証券は倒産隔離されていない状態である。これは支配の移転の3要件のうち一つ目を満たしていない、すなわち銀行側で金融資産の消滅を認識できない状態である。
これが財務構成要素アプローチによった場合の処理。


しかし現行(慣行)では、ローンパーティシペーションはリスク経済価値アプローチによって原資産の消滅が認識される。この処理こそが銀行の望むものであって、金融商品会計基準では財務構成要素アプローチを基準としているものの、ローンパーティシペーションを売買取引として処理することが経過的に認められている。

(※なお財務構成要素アプローチによった場合の会計処理では、参加者からの払い込みを銀行では「借入金」として処理しなければならない)

また、ローンパーティシペーションと同様にリスク経済価値アプローチによってその消滅が認識される負債のケースとして、デットアサンプションがある。



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